スイカの名産地

【昔の自分を思い出しても、良いことはないよ】

 

 

童謡【スイカの名産地】を耳にする度に、思い出すこの言葉。

 

 

人には昔の良かった自分に戻りたい、という欲求がある様に思える。

しかし、昔の良かった自分が今の自分にとって良い自分であるとは限らない。

時代が、環境が、周りが変わっているからだ。

 

 

 

ともだちができた すいかの名産地
なかよしこよし すいかの名産地
すいかの名産地 すてきなところよ
きれいなあの娘(こ)の晴れ姿 すいかの名産地

五月のある日 すいかの名産地
結婚式をあげよう すいかの名産地
すいかの名産地 すてきなところよ
きれいなあの娘の晴れ姿 すいかの名産地

とんもろこしの花婿(むこ) すいかの名産地
小麦の花嫁 すいかの名産地
すいかの名産地 すてきなところよ
きれいなあの娘の晴れ姿 すいかの名産地

 

 

 

無邪気に、言われるがままに歌っていたあの頃。もう戻れない。

 

すいかの名産地が一体何処なのか、考えずに歌えばいい時代はとうに終わっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業が終わり、放課後は友達とブランコに乗って靴飛ばしをした。

少し先には滑り台でクラスの女子達も遊んでいる。

中には僕の好きな春名ちゃんもいる。

僕は思いっきり蹴って靴をなるべく春名ちゃんのいる所まで飛ばした。

「ごめん、取って!」と言うのは恥ずかしいので、片足でさも大変な振りをして、靴を取りに向かった。

春名ちゃんは優しいから靴を取って来て、そこで少し話せないかな、なんて思いながら。

 

「ただいま!」と身体いっぱいに遊んでクタクタで家に帰ると、僕の好きなアニメがやっていた。しまった忘れてた!ランドセルを投げ捨て、見入った。

その間お母さんは何やら台所でトントントンと包丁で何かを切っている。

そういえばお腹はぺこぺこだ。

アニメを見終わると「ご飯だよ~」とカレーとサラダが出てきた。

サラダはあまり好きではないけれど、カレーは大好き!

急いで食べたらお母さんに笑われてしまった。

 

ご飯を食べ終え、お風呂に入ってリビングに戻ると、お父さんがビールを飲んでいた。

何だか大人!って感じ。

あぐらをかいているお父さんの中にすぽっと入って、一緒にテレビを見た。

ちょっと大人になった気分。

テレビでは偉そうな人達が怖い顔して話し合っていてばかりで、全然楽しくない。

「この人は、ないかくそうりだいじんって言うんだよ」

お父さんは教えてくれたけどよく分からない。

アニメの方が面白い!

 

その内段々と眠たくなってきた。頭がこくこくしてきて、瞼が重い。

うつらうつらしていると、身体が浮いた。

大きな腕に包まれて布団に運ばれていた。

何だかすごく安心する。

 

 

次の瞬間には「朝だよ、起きなさい!」とお母さんの声が聞こえた。...眠い。

でも今日も学校に行ったら友達にも会えるし、もしかしたら春名ちゃんと話が出来るかもしれない!そう思うとわくわくして、頑張って起きられた。

そういえば今日の音楽の時間に歌う曲って何だっけ・・・

あっ!「すいかの名産地」だ!すごく好きな曲!

今日も楽しい一日になりそう!

「いってきます!」大きな声を出して、玄関のドアを開けた。 

 

 

 

 

 

 

 

 

すいかの名産地が一体何処なのか、考えずに歌えばいい時代は終わった。

 

すいかの名産地は何処なのか、疑問に持ちリサーチをするのは当たり前。

場所を調べた上で、概要・特徴・今後の展望・考え得るリスクをまとめる。

そして自分はその情報を使って何をして、どれくらいの利益をもたらすか、説明・提案をしなければならない。もし、そこまで気が回らないのであれば、そこまでの話。