誠宮道貞①

プリン鳴る

 波乗り男が

  消えた街

   多摩川行きは

    up and down

     作者 誠宮道貞

 

この短歌をご存知だろうか。

誠宮道貞なる人間は、ネット上で創作短歌を発信している人物であり、一部の界隈に熱狂的なファンを持っている。しかし、そのあまりにも前進的な作品性は大衆受けとはかけ離れており、結果世間的に全くと言いほど注目されていない。

彼の人間性は非常に複雑である。ある人は彼を「根拠の無い自信家であると同時に根拠の有る小心者」と評する。彼は作品のオリジナリティーを非常に大切にしており、この世にまだ誰も作った事の無い短歌を創作しようと日々勤しんでいる。彼自身それはある程度達成していると踏んでいる。その思い込みが彼の自信を支えていた。一方で彼は他の作者の短歌をあまり見ない。知っている短歌と言えば小学校の国語の教科書に掲載されていた歌の一部をちらほらまばらに覚えているくらいだ。彼はあまりにも短歌を知らない。正確に言うと知る事を恐れている。何故か。自分の作品が凡庸であるという事実を突きつけられる可能性があるからだ。もし他に同じような作品があったら?とても彼の小さな器では耐えきれないだろう。自分を守る為に彼は小心者であろうとしている。

ただ私の見方では、最近こうした彼の姿勢には変化が見られる。徐々に他の作者の作品を参考にしている節があるのだ。何か心境の変化があったのか、私には分からない。しかし、もがきながらも前進しようとするその姿勢には、頭が下がるばかりである。

前置きが長くなったが、冒頭申し上げた様に彼は世間であまり認知されていない。そこで、大変僭越ながら誠宮道貞のファンである私が少しでも彼の短歌を世に広めるべく、このブログにて紹介させて頂く運びとなった。

さて、彼の短歌の一番の特徴は何と言っても「解説がないと意味が分からない」点にある。上記の短歌にしても、いくら読み込んでも何を言いたいのかさっぱり分からない。

プリンが鳴るとは一体どういう事か。波乗り男が消えた事と一体何の関係があるのか。そして唐突に出てくる多摩川というキーワード。ラストを締めくくるup and down…。

この記事ではなるべく平易な文章で上記短歌の素晴らしさをお伝えしていきたいと思う。

そしてこの記事を読んだ後、1人でも多くの人にとって、誠宮道貞という人間がふとした瞬間に思い出し、心が少し暖かくなる、その様な存在になってくれれば、これ以上の幸せはない。

 

初句 プリン鳴る について。

 

誠宮の短歌の特徴として「身近な名詞を違和感ある動詞とくっ付ける」という点があり、この短歌にも活かされている。

「プリン」という誰しもが一度は食した事のあるデザートと「鳴る」という生物しか発し得ない動詞をくっ付けているのだ。

ではプリンが鳴るとは一体どういう事か、解説していきたい。

まず前提知識として、誠宮にとってプリンとは非常に大切な食べ物である事を認識して欲しい。

彼はプリンについて

「電車の中でThe Beatlesを聞きながら食べる物」(コロコロコミック第3536号巻末インタビューより)と評している。

つまり、The Beatlesという偉大なロックバンドの曲を聴き安心感に包まれながら、電車の中で食事をするという言わば周りからは眉をひそめられる行為を実行する。

非難の目を感じつつ、何かに守られているという実感を得る。

その非難と安心感との間を振り子の様に行き来しながらその振れ幅自体を楽しみ、生きがいとする。そのダイナミックな感情の動きにポップなアクセントを加えるには、プリンが1番適している。彼にとってプリンとは、そういう食べ物なのだ。

勿論、小心者かつ周りの目を非常に気にする彼には、電車の中でプリンを食べる勇気などない。あくまで彼の想像上の話である。

そしてそのプリンがこの短歌では、鳴ると表現されている。

鳴るとは、音を発するという意味である。プリンはどの様な背景で音を発したのか、この時点ではまだ明らかにされていない。続いて第2、3句を見ていきたい。

 

2句 波乗り男が

3句 消えた街 について。

 

彼の短歌の2つ目の特徴として、「彼の今までの経歴や経験談を知らないとまるで意味の分からない歌になる」という点がある。

それでは2、3句について、彼の思い出と共に解説していきたい。

2句の波乗り男とは普通に考えればサーファーの事だろう。

そして3句で言及されている街は元々サーファーで賑わう街であった事は確かだ。

サーファーの経済効果は非常に高い。ある浜では年間約12億円にも昇るという。サーファー相手に商売をしている人も沢山いるだろう。そうした人達にとってサーファーが消えてしまうなんて、一大事である。

さて、彼はサーファーに対して、非常に嫌な思い出を持っている。

誠宮が海辺に出掛けた時の事。彼は砂浜を1人で歩いていた(何故彼が1人で海に行き、砂浜を歩いていたかは、本題とはズレる為、別の機会に譲りたい)

すると海から上がってきたサーファー2人組(どちらも色黒で筋肉マッチョ、顔の濃い男だった)に声を掛けられた。

「あの、海の家・竜宮城って知らないですか?」

 誠宮は知っていた。

「あぁ、知ってますよ。僕もこれから行こうと思っていたので、一緒に行きましょう」

「あぁ・・・でも大丈夫ですよ!悪いっすよ!場所さえ教えて貰えれば!」

「いえいえ、行きましょう!事のついでです!」

「うぃ。ありがとうございます」

誠宮は彼らを海の家・竜宮城へ連れて行った。ただでさえ人気店である事に加え、昼時であるせいもあり、行列が出来ていた。ここの焼きそばは本当に美味しく、誠宮の好物の1つであった。

誠宮が胸を躍らせながら行列に並ぼうとした時、彼らはとんでもない行動に出た。

何と誠宮より、前へ並んだのだ。

しかもそれが当然であるかの如く自然な風に。

誠宮は困惑した。自分が案内したのに、何故彼らは自分より前へ並ぶのか。

前へ並ぶ彼は既に自分達の世界に入っており、誠宮には目もくれていない。

午後はどの女に声を掛けるやら、どのバーに連れ込むかなどと話している。

おかしいだろう。何故案内した自分より前へ並ぶのか。普通感謝を示しつつ、自分の後ろに並ぶのではないか、と誠宮は徐々に怒りを覚えてきた。一方で、行列が進むにつれ、ある1つの希望を彼は見いだしていた。店員さんに席へ呼ばれた際に、彼らは誠宮に順番を譲るのではないか。今は仮に誠宮の前に並んでいるだけではないか、と誠宮は考えたのだ。

しかし、彼の希望は脆くも崩れ去る。彼らは店員さんに声を掛けられると、こちらに一瞥する事もなく、席へと進んでいった。誠宮は膝から下の感覚が無くなった様に立ちすくんだ。誠宮にも一言文句を言う気概があれば良かったのだが、そんなものは1分子たりとも持ち合わせていなかった。

そんな彼は今もサーファーに対して怨念じみたものを感じているのである。

 

彼のこうした波乗り男(=サーファー)に対する辛い思い出を前提に、もう一度、初句「プリン鳴る」からの一連の意味を考えていきたい。

初句「プリン鳴る」では非難の目に晒され居づらさを感じつつ、一方で自分は安全圏にいるんだという安心感を持つこと。そしてその両極を行き来する感情自体を楽しむ事。それこそが誠宮の生きがいである事。そんな時に食べるのがプリンである事を申し上げた。

非難と安心感---。

道義的に考えればサーファーが居なくなるというのは、海の街としては大打撃であり、商売を畳む人も出てくるだろう。それを無邪気に喜ぶ彼は、非難されるべき対象である。

一方波乗り男が消えた街とは、天敵のサーファーが居なくなるという誠宮にとっては願ってもない状況であり、言わば彼にとって安全圏が生まれたことになる。

つまり彼にとって「波乗り男が消えた街」という状況は「人の不幸を喜ぶな!という周りからの非難の目」と「天敵の居ない安全圏にいる安心感」の両極が生成されている事になり、正に彼はプリンを食べるべきタイミングにいるのだ。

「プリン鳴る」とは、そうした状況である事を象徴的に表現しているのである。

 

 

4句 多摩川行きは

5句 up and down について。

 

さて、それでは4句5句について解説していきたい。

2句3区「波乗り男が消えた街」の句は海を彷彿とさせていたが、一転対照的に川というキーワードが出て来た。しかも多摩川である。多摩川については誠宮を語る上で欠かす事の出来ないキーワードであるので、是非覚えておいて頂きたい。彼は多摩川における思い出を沢山持っているので、よく作中にも出てくるのだ。

さて、初句~3句(プリン鳴る 波乗り男が消えた街)で彼は自分の心情について丁寧に記述した一方、4句5句(多摩川行きはup and down)では彼の行動面を中心に表現している。

多摩川行きというのは、彼が普段利用している路線・東急多摩川線多摩川行きを指していると考えるのが自然だろう。しかし、東急多摩川線はup and down(上ったり下ったり)が激しい路線かと言われると、そうでもない。では何故up and downで誠宮はこの短歌を締めくくったのか。彼はこの短歌においてup and downを「行ったり来たり」という意味で用いているのだ。ここまで言えば往年の誠宮ファンならもうピンと来た方もいるかもしれない。

そうあれは2015年12月のこと。その日は特に寒い日であった。彼はいつもの様にカメラ片手に多摩川へ向かおうと東急多摩川線に乗っていた(彼の趣味は写真撮影である)。今日はどんな風景を撮ろうかと胸が高鳴っていた。両手の人差し指と親指でL字型をつくり、互いにくっつけて□にした。彼はカメラのファインダーに模したその□をそっと覗き込んでみた。その瞬間自分がいかに大胆な行為をしているか、気がついた。電車内でカメラ小僧よろしく、□を覗き込むなんて、なんて目立つことをしてしまったのか。恐る恐る周りを見ると、誰も彼の事を見ていなかった。良かった、きっと誰も見ていなかったのか、見ていたとしてもちょっと変な人が居るくらいの認識ですぐに自分の世界に戻ってくれたのだろう。そう思う様にして、しばらく息を殺して座っていた。しかし彼の願いは脆くも崩れ去る。多摩川駅に着き、ホームに降りた瞬間、声を掛けられた。

「あの~もしかして、多摩川の自然を撮るイベントに参加される方ですか?」

振り返るとスレンダーな若い女性が笑顔で立っていた。

真っ赤なマフラーに黒いコートを着ていて、長い金髪がよく映えている。

「・・・自然を撮る・・・?」

誠宮はそのイベントに参加する予定はない。

「・・・いえ。違いますけど。」

「えっ・・!あっ!ごめんなさい!つい車内でカメラのポーズをされていたので」

「あっいえ・・・全然」

「つい写真撮る方なのかな、と思ってお声がけしちゃいました!」

(そのイベントには参加しないけれど、写真は撮ります)

そう伝えようとすると、彼女は「すいませんでした」と頭を下げ、笑顔で去っていった。

しっかり見られていたのだ…。

あのポーズを…。

彼は、見られていたという恥ずかしさを感じると共に、ある懸念を抱いた。

そして多摩川沿いに行ってみると正にその懸念が現実化していた。

誠宮の撮影スポットに集団がいて、その中にあの真っ赤なマフラーの金髪女性の姿が見えるのだ。

彼は頭の中に渦が巻く感覚に陥った。

誠宮は一度微妙に顔見知りになった人間とのコミュニケーションが非常に苦手なのだ。

しかも彼の弱み(恥ずかしいポーズを見られたこと)を握った相手だ。彼にとって彼女はもう2度と会いたくない人間である。

更に彼女は誠宮の事を写真を撮らない人と認識している。にも関わらずカメラを持った誠宮を彼女が見つけたら、誠宮は嘘をついた事になり、非常にばつが悪い。

もし彼女に見つかったら、何故どうしようもない嘘なんてついたのか、と不思議な顔をされるのが落ちであろう。

ここまで考えるのが誠宮なのである。

しょうがない。彼は踵を返し、また帰りの電車に乗った。

車内のちょっとした行為が、これ程までに悪影響を及ぼすとは、彼自身驚いていた。

もし□なんて作らなかったら、彼女に声を掛けられる事もなかった。万事上手くいっていた。

一体自分は何をしているのか、彼は情けなくなった。

何故自分が帰らなければいけないのか。彼女が勝手に早合点して話しかけたのが悪いのに。自分は何も悪くないのに・・・。

彼は電車に揺られながら自分が帰る必要があるのか自問し始めた。

そして「なんで俺が帰らなきゃならないのだ!俺は写真を撮りにきた!ただそれだけだ!帰る必要などない!」そう結論づけた。

彼はもう一度反対方向の電車に乗り、多摩川駅へ向かう事にした。

よしよしよし、俺は写真を撮りに多摩川に行くんだ、写真を撮りに多摩川に行くのだ、もしかしたら彼女に会わないかもしれないし、会ったとしてもあの集団だ、声を掛ける事なく過ぎ去る可能性の方が高い。よし行ける!

そう言い聞かせて彼は多摩川駅を降りた。

 

結論から言うと、彼は写真を撮る事無く、再び帰りの電車に乗った。

彼女の姿を河原で見た瞬間、彼の決意はぼろぼろに砕け散ったのだ。

 

これが誠宮道貞の東急多摩川線up and down(行ったり来たり)事件である。

短歌ではこの事件を「多摩川行きはup and down」と、何の捻りもなくただ記述している。彼としては読者に自分の失敗談を記述し、ちょっとした笑いを提供しようとしているのだ。しかし私が思うに本質は全く異なる。

誠宮は読者に「よくある!よくある!」「私もこういう事あったよ!大丈夫!」と 言って欲しいのだ。非難ではなく、安心感が欲しいのだ。これが本質である。

でなければ、自分の欠点を他人に打ち明ける事を嫌う器の小さな誠宮が、自分の情けない事件についてなど短歌で言及し得ないからだ。

 

 

まとめ

 

プリン鳴る

 波乗り男が

  消えた街

   多摩川行きは

    up and down

 

とは・・・

「プリン鳴る波乗り男が消えた街」で「非難と安心感を行き来する事自体が自分の幸せだ」と読者に豪語しつつ、「多摩川行きはup and down」では「やっぱり安心感だけ得たいよね」とチラリ見事なダブルスタンダードを披露している。そんな誠宮の意気込みとエゴと矛盾とがごちゃ混ぜにされている。そんな短歌なのである。

欠伸

電車で私の真向かいに座っている女性が欠伸をした。

中国の三国時代の豪傑が酒の席でする様な、若しくは、龍が雲の中から轟音を鳴り響きかせながら出現してくる様な、若しくは、甲子園決勝9回裏2アウト満塁0-1で負けているチームがする円陣の掛け声の様な、天下に轟く豪快な欠伸だった。

 

女性の左隣に座っている中年サラリーマンは、欠伸が始まった瞬間、これは只事ではないと察し、内ポケットから携帯電話を取り出し慣れないながらも写真を撮った。しかも連写モードで撮った。

 

女性の右隣に座っている女子高校生は、テスト期間中なのか英単語帳を読んでいたが、中年サラリーマンが携帯電話を取り出した瞬間、隣で起こっている一大事を瞬時に理解した。「こんな事ってある?!うわぁーーーー!!」と叫びながら、欠伸を必死に脳内に焼け付けた。学校に行ったら皆に話そうと彼女は思った。

 

私の右隣に座っている青年は最初、女性の欠伸を目の端で捉えながらも、目立った動きをしなかった。しかし、心の中はあらゆる世界の事象が雪崩の様に降りかかり、渦を巻き、天に昇り、弾け飛ぶ様な動揺と高揚と活力で溢れていた。彼はあまり流行りものには興味がない。正確に言うと流行りものに乗らない事によって自分のアイデンティティを保っている面がある。そんな彼が今ぽっと出の欠伸に反応するなどあってはならない事であった。しかし、抗えがたい魅力の前には、意志など無力。すぐに彼はポケットからハーモニカを取り出し、モーニング娘。の【Love マシーン】を吹き、この場にいられた奇跡を祝福した。

 

私の左隣に座っているおばさんは、女性が欠伸をした瞬間、事の重大さに気づき隣に座るご主人の腿を「あんたぁ!あんたぁ!」と叩いた。ご主人は奥さんの興奮とは対照的に欠伸をしみじみと見て「そうか...。今まで色々すまんかった。これからもよろしくな」と奥さんに向かって呟いた。ご主人は20年振りに奥さんの手を握った。

 

ドア付近に立っていた若いキャリアウーマンは、欠伸を見て自分の人生を振り返った。子どもの頃は引っ込み思案な女の子だった。しかし、高校生の頃初めて付き合ったアクティブな彼氏の影響で、何事もまずは飛び込んでみるというチャレンジ精神がついた。彼とは自転車で2人乗りをして土手を走ったり、放課後教室で語り合ったりと、大切な時間を過ごす事が出来た。大学は東京に出て、初めて1人暮らしをした。大学では軽音サークルに入ってみた。バンドを組み、演奏する楽しみを知った。サークルや学部、アルバイト先の何人かの男性に告白され、付き合った。彼らとは少し背伸びしたオシャレなバーに行ったり、熱海に旅行に行って海で語りあったり、よこはまコスモワールドの観覧車に乗って頂上でキスもした。今でも思い出すと、心が締め付けられる。卒業旅行はゼミの仲間とはバリに行き、サークルの仲間とは沖縄に行った。帰りの飛行機で「これにて大学生活編、完結!」なんて心の中で締めくくってみた。仲間に恵まれた大学生活だった。就職面では希望していたメディア関係の会社に入社する事が出来た。これからここでキャリアを積み、行く行くは社会に大きな影響を与える人になりたいと思っていた。先輩にも同期にも恵まれた。希望の部署にも配属され、大変ながらも充実した毎日を過ごしていた。・・・と思っていた。そんな矢先、彼女は鬱病になった。勝手に涙が出る。朝起きられない。常に頭に靄がかっていて、思考がうまくまとまらない。身体全体に浮遊感があって、自分の身体ではない感覚に陥った。同年代の人達より早く成長したい。自分の仕事で世の中を良くしたい。そんな思いが先走り、仕事量がキャパシティを完全に超えてしまっていた。身体の不調は薬を飲んで休息をとれば治るが精神の不調はどうやったら治るのか、彼女には全く想像が出来なかった。彼女はここまで満足の行く人生を歩んできたし、これからも歩んでゆくのだろうと勝手に思っていた。何故こんな事になってしまったのか。何処で間違えたのか。彼女は仕事を退職し、実家に戻った。母親に鬱病の事を話すと「あんたが気の済むまでここでゆっくりしとき」と言われ、涙が止まらなかった。実家では日が暮れるまで、子どもの頃よく遊んだ公園や初めての彼と初デートに行ったイオンのフードコート、夜あまりの腹痛にお父さんに連れて行って貰った救急病院など思い出の場所を散歩した。そして彼女はこれ程までの愛に支えられ生きてきた事に気がついた。それからは鬱病は快方に向かっていった。現在、彼女は学生時代では負け組だと思って見向きもしていなかった居酒屋の店長として働いている。酔っ払いの対応や言うことの聞かない学生アルバイト、長い労働時間・・・日々大変であるし、前職の様な一歩一歩人生の階段を登ってる感じはしない。昔の自分が思い描いていた人生とは外れてしまった。彼女はそれを少しずつ受け入れて生きていく覚悟を持つ事が必要だと感じている。しかしまだ思い通りの人生を歩んでいた自分の虚像を諦め切れない。その宙ぶらりんな状態が今の彼女だった。そんな矢先に出会った女性の欠伸だった。

 

私の左前に立っていた若いサラリーマンは、いじっていた携帯電話を落とした。画面が割れていたが、気がついていない様子だった。こんな偶然があるのだろうかと彼は思った。あの欠伸は、間違いない。小学生の頃、転校してしまった初恋の人だった。彼は女性の元に行こうとした。しかし、あの欠伸の前では全てが無力。ただただ見惚れてしまった。足が動かない。ならばと彼は、この風景を絶対に忘れませんように、と祈った。

 

私は女性の欠伸を見て、思わず緊急停止ボタンを押そうとした。

緊急停止ボタンを押してこの空間に女性の欠伸を永遠に閉じ込めたい。ここにいる皆と酒を酌み交わし、キャンプファイヤーをして、マイムマイムを踊って、テントの中で好きな人の話をして、時々女性の欠伸を見て・・・そんな日々を送りたいと思った。しかし、気付いた。緊急停止ボタンを押してもそんな日々は来ない。電車が止まるだけだ。そう、つまり私は混乱していた。そして私は何を思ったか(どうせ混乱しているなら・・・!)と、急に踊り出した。そう、まだ混乱していたのだ。曲名は分からないが、アップテンポなハーモニカの音が聞こえた。ステップを踏む。手をL字にして前へ押し出す。中年サラリーマンがwow wow wow wowと相の手を入れ、叫んでいる。女子高生は、手を叩いて大声で笑っている。キャリアウーマンは私の前に立ち、泣きそうな目でこちらを一瞥し、何故か一緒に踊り出した。中年夫婦は、握り合った手は離さず、各々もう片方の手を頭の上で振った。若いサラリーマンは、欠伸をしている女性の元に四つん這いになりながらも辿り着き、告白しようとしていた。

 

 

 

女性は欠伸を終え、乗客は各々の日常へと戻っていった。

眠たいのだろう、女性はそっと目を閉じた。

ウルトラマンとの恋

私はもう、ウルトラマンを愛せない。

 

何が地球を守るヒーローよ!

私1人守ってないくせに!

 

私は、消費者金融からお金を借りている。

アルバイトもしているから決して返せない額ではないが、なかなかの額になってしまった。

 

「人は、手を差し伸べてくれない人間より、手を差し伸べても施しが不充分な人間を恨む」

 

私はウルトラマンに地球を守って欲しくない。

怪獣に日本を多少めちゃくちゃにして貰えれば、借金くらいチャラになるのではないかと思っているからだ。

 

しかし、ウルトラマンはいつも怪獣を倒す。

その度に日本中がウルトラマンを賞賛し、湧く。

 

怪獣を倒す度に私は「ふざけんな!おのれぇ!」といつも石ころを地面に投げつけ、八つ当たりをしている。

 

 

頭では分かっている。

ウルトラマン...私の彼氏は、彼にしか出来ない事をしている。

そしてそれは多くの命を救うとても素晴らしい事。

・・・しかし、つい思ってしまう。

私を守らないで、何で地球なんか守るのよ。

このままだと私、借金で首が回らなくなってしまう…。

 

 

 

 

 

「別れよう」

怪獣を倒した後、人知れず人間に戻った彼が切り出してきた。

 

突然の告白に頭を過ぎったのは、彼との思い出の数々だった。

 

なんで別れたいの?買い物袋をいつも持たせるから?借金チャラにしたいと思ったから?奨学金使ってエステ行ってるから?あんたに服買ってもらってるから?なんで?

一緒に行った近所の夏祭りも、道後温泉も、赤提灯がぶら下がった居酒屋も、湘南の海も、みんなみんな楽しかったじゃん!

 

溢れる思いに嘘はつけない。

 

「・・・なんで?!なんで別れなきゃいけないの?!嫌だ!」

 

一度言葉に出してみて、改めて確信した。

別れたくない!まだまだ一緒にいたい!

 

「今まで倒してきたどの怪獣よりも、手強そうだ」

彼は苦笑いをした。

 

「ごめんな。でももう、君とこれ以上付き合っていこうという気持ちが・・・」

 

キャーという大きな悲鳴と共に大きな地響きが聞こえた。

 

この感じ...また怪獣がやってきた!

地響きのした方向を見ると・・・いた!海老型の怪獣だ。

 

「ごめん、行ってくる」

彼はいつもの変身のポーズを取ろうと腕を天に突き上げた。

 

…かないで。

 

気がついたら彼の腕にしがみ付いていた。

 

「な、何してるんだ!変身しなきゃならないのに!」

 

「行かないで!」

 

彼の身体がボコボコと唸りを上げているのが分かる。

細胞分裂を繰り返し、40mの巨大なヒーローになる準備をしているのだ。

 

「おい!危ないぞ!変身が始まる!」

 

「やだ!別れたくないもん!」

 

彼の身体は少しずつ大きくなり、指先から徐々に赤色と銀色に変色していった。

 

「おい!!危ないぞ!!」

 

彼の変身はもう止まらない。

顔も徐々にウルトラマンのそれになってきた。

このままだとは変身した彼の腕から落ちて、地面に叩きつけられてしまう。それでも私は彼の腕を離さなかった。

 

「おい!いい加減に‥シュ...ワッチ!いい加減にしろ!」

 

シュワッチが出始めたという事は、いよいよ変身が終わりかけているという事だ。

 

「…分かった!分かったから!シュワッチ別れないから!シュワッチ!」

 

えっ?

 

「別れないから、一先ず腕から離れろおぉぉぉおおぐわぁあぁぁあシュワッチー

ーーーーーー!!」

 

彼の身体は一気に巨大化していった---。

 

海老型の怪獣とは必死に戦った。

海老型怪獣の弱点は、首元の甲羅と甲羅の間の肉だから、そこを重点的に攻め、見事勝利を収めた。

再び歓声が上がった。

しかし周囲の興奮とは逆に戦いながらも、彼女の姿を追っていた。

 

人間の姿に戻ると、いつもの集合場所に行った。

変身した場所の一番近くの駅の一番北側の出口前。

彼女は無事だろうか。

ひょっとして、腕から滑り落ちてしまったのではないか。

生きていたとしても怪我は大丈夫か。 

またこの間に怪獣が来たらどうしよう。

そんな事ばかり考えていた。

しかし心配は杞憂に終わってくれた。彼女はやって来た。 

 

「無事だったんだね、良かった」 

怪我もなさそうだ。

 

彼女はしばらく無言でうつむいた後、口を開いた。

 

「分かったから別れないから、なんてその場しのぎの言葉、聞きたくなかった」

 

「そうでも言わなきゃ、君は死んでいた」

 

「貴方への愛を失った私は、今や死んだも同然よ」

 

顔を上げ、真っ直ぐこちらを向いてくる彼女の思いの強さに驚いた。

さっきまで別れたいと思っていたのに、急に愛おしさを感じている自分がいる。

 

「たった一言で愛は失われるのか?」

 

「失うわよ」

 

そして今の様にたった一言で愛が蘇る事もある。

 

であれば…

 

「そうか。じゃあ逆にたった一言で愛を取り戻せる事もある…」

 

彼女は「えっ」と目を見開いた。

 

「俺は日本をめちゃくちゃにしてやる。そして、君の借金をチャラにしてやる!」

 

「えっ…?」彼女は目を見開いた。

 

天に腕を突き上げ、変身をした。

怪獣が襲ってきていないのに変身する事は、禁忌技だった。もうウルトラマンには戻れない。しかし、良いのだ。俺は、日本よりも大切なものを守る。

 

地上40mから見る景色もこれが最後かと、周囲を見渡し、ちらと彼女を見た。

 

彼女は、笑顔で手を振っている。

よし!俺はこれから彼女の笑顔をこの手で創る!

 

そう決心した矢先、悲鳴と地響きが聞こえた。遠くに鯛型の怪獣が見えた。

 

鯛型の怪獣の弱点は確か・・・。

東京

1999年 夏 東京

蝉の甲高い響きをビルディングが無機質に跳ね返して、周囲一帯が夏の音で満たされている。

 

この夏、ノストラダムスの大予言が外れ、時間の楔を失った日本列島には、何とも間延びした日々が流れていた。

 

日本中で、「ノストラダムスの大予言が外れた。私は7月で死ぬと思って生きてきたのに、この先どうすれば良いの。」と、異口同音で口にする人々が大勢出現した。彼らのただ目の前の出来事を脊髄で反応して生きる姿勢は、日本経済のその躍動感を徐々に奪っていった。

 

 

駅のロータリーには、やるかたない表情で佇む多くの人で溢れかえっていた。

そんな彼らの視線の先には一人のおじさんがいた。

ピンクのスピーカーを持ち、全身青色のタイツを着て、黄色のマントを羽織っている。

彼はスピーカーを持ち、話し出した。

「だから言ったでしょう!地球は滅びないって!ノストラダムスの大予言は嘘だって!」

彼の煽りにすら反応する心の自由さを失っていた人々は、ただただ無表情だった。

 

「...悔しいでしょう!地球が滅びなくて!ねぇ!...ねぇ?」

 

ノストラダムスの大予言は嘘だったって分かったでしょう...ねぇ...?」

 

「ほら!嘘なのが分かったんだから、地球は滅びなかったのだから、前を向いて生きましょうよ!...ほら?」

 

おじさんは、予想外に聴衆の反応が薄かったせいか、徐々に言葉の勢いを失っていき、煽り疲れてきた様子だった。

 

私は彼の演説の途中でその場を後にしたが、あの様子では恐らくおじさんも遅かれ早かれ退散したのではないだろうか。

 

 

2018年 6月。

ノストラダムスの大予言の余波は未だにこの国を覆っている。

大いなるストーリーの中で全てが一度リセットされる

そんな願望を抱えた人々が闊歩する町がある。

それが、東京という街だ。

乙女散策道中

乙女は、季節外れの浴衣を身にまとい、日傘片手に歩いていた。

浴衣には白地に蒼い花があしらわれていて、彼女の黒い髪がよく映えている。

日傘を持つ手には陽が差し込み、透き通る様な肌が輝いている。

 

季節は春。

人は出会いと別れと酒に酔い、うららかな風と陽気な笑い声が往来する、そんな季節を彼女は生きていた。

 

その日は風があった。

まどろむ様な暖かい風。

風はどこからか花を吹き流し、彼女の日傘に紋様を描いた。

無邪気に揺れる日傘は、その紋様を自在に変え、この街の風景を彩った。

 

 

 

彼女が身を乗り出しながら見ているのは、喫茶店のショーウィンドウに並べられた食品サンプルだ。

笑ってしまうくらいに渾身の力で見ている。

たまに前に見たサンプルと見比べ頬に手を当てたり、「こりゃすごい」といった表情をする。

大げさだろうが、彼女はその命いっぱいを今この瞬間に込めて、食品サンプルを見ている、そんな風に見える。 

彼女はしばらくにらめっこをした後、一切の思い残しなし、といった感じで軽やかにその場をあとにしていった。  

 

 

ここは日本で一番古い町。 

彼女の周りには、多くの人々が行き来する。

 

近くの小学校で卒業式があったのだろう、よそ行きの格好をした母親と子ども達のグループがちらほら見える。

子ども達は、初めて味わう別れの虚無感とこれから始まる生活への期待感が入り混じり、落ち着かない様子でいる。

母親達はと言うと、子どもの人生の区切りに立ち会えた喜びに頬が緩んでいる。

今頃、父親達も同じ気持ちで仕事場に向かっている事だろう。

 

彼女は、心の中で子ども達にエールを送った。

 

ここは日本で一番観光客が多い街でもある。

バックを背負った外国人や卒業旅行に来ている学生、カップルの姿もある。

皆、その目に映るものに心揺れ、朗らかな表情をしている。

 

彼女は少し誇らしげな表情をした。

 

花見をしているおじさんグループも見える。

うちのカミさんが~、あそこの酒は~、あの女は俺の事好きなんだよ~

と端から聞くと何でもない事を馬鹿笑いをしながら話している。

何となくだけど、おじさん達は長い付き合いなんじゃないかな。

お互いに佇まいを許し合っているというか、雰囲気が溶け合っている。

多分、久しぶりに会えたんじゃないかな。

 

楽しそうに話すおじさん達に彼女は混ざりたがっている様子だった。

 

 

 

 

 

小路には情緒溢れるお茶屋の家並みが連なっている。

彼女は、入り口で仁王立ちをすると、うん!と頷き小路に入っていった。 

 

小路では、おじさんは酒に酔い、カップルは手をつなぎ街並みを眺め、舞妓さんは早歩きでお店に向かい、青年はカメラを手に取り首を振って写真スポットを探し、子どもは母親の手を握りながらソフトクリームを食べ・・・皆、各々の春を満喫している。

 

彼女はそんな春を歩いていった。

 

今日は、風が強い。

木々がさざめく音がした。

どこから吹かれたか、風は小路に花を降らし始めた。

徐々に花はゆっくりとその濃度を上げ、世界を桃色に包んでいく。

始めは何人かが、そして段々と、遂にはその場にいる全員が変化に気づいた。

花の洪水に、世界は春色に染まった。 

 

観光に来た青年は両手を上げ、この場に居合わせられた奇跡を表現し、

舞妓さんは踊り、この瞬間を祝福し、

ランチに来ていたOLは、歌い、風景に花を添え、

酒に酔ったおじさん達は叫び、喜びを溢れさせ、

修学旅行生は、上着を振り回し、興奮し、

カップルは手を握り、この情景を目に焼き付け、

そして全員、魅了された。

 

 

乱れ舞う花、浮かれる人々、うららかな風、柔らかな陽差し、そんな景色の中、彼女は歩みを止めた。

桃色の空を見上げ、一瞬見とれた様子だった。

蒼と桃の花があしらわれた浴衣に、彼女の黒い髪がよく映えている。

 

彼女は少ししゃがんだ。

すると勢いよく、日傘を空へと投げた。

日傘は花の中で、陽光を浴び金色に輝いた。

 

彼女は、はらはらとゆっくり落ちてゆく日傘を見やると、

後ろに手を組みながら、命いっぱいの笑顔でこちらを振り返った。

桃色で溢れた世界は、一気に弾けた。 

 

ここは日本で一番古い町。

季節は春。

彼女は一瞬の燦めきを生きていた。

スイカの名産地

【昔の自分を思い出しても、良いことはないよ】

 

 

童謡【スイカの名産地】を耳にする度に、思い出すこの言葉。

 

 

人には昔の良かった自分に戻りたい、という欲求がある様に思える。

しかし、昔の良かった自分が今の自分にとって良い自分であるとは限らない。

時代が、環境が、周りが変わっているからだ。

 

 

 

ともだちができた すいかの名産地
なかよしこよし すいかの名産地
すいかの名産地 すてきなところよ
きれいなあの娘(こ)の晴れ姿 すいかの名産地

五月のある日 すいかの名産地
結婚式をあげよう すいかの名産地
すいかの名産地 すてきなところよ
きれいなあの娘の晴れ姿 すいかの名産地

とんもろこしの花婿(むこ) すいかの名産地
小麦の花嫁 すいかの名産地
すいかの名産地 すてきなところよ
きれいなあの娘の晴れ姿 すいかの名産地

 

 

 

無邪気に、言われるがままに歌っていたあの頃。もう戻れない。

 

すいかの名産地が一体何処なのか、考えずに歌えばいい時代はとうに終わっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業が終わり、放課後は友達とブランコに乗って靴飛ばしをした。

少し先には滑り台でクラスの女子達も遊んでいる。

中には僕の好きな春名ちゃんもいる。

僕は思いっきり蹴って靴をなるべく春名ちゃんのいる所まで飛ばした。

「ごめん、取って!」と言うのは恥ずかしいので、片足でさも大変な振りをして、靴を取りに向かった。

春名ちゃんは優しいから靴を取って来て、そこで少し話せないかな、なんて思いながら。

 

「ただいま!」と身体いっぱいに遊んでクタクタで家に帰ると、僕の好きなアニメがやっていた。しまった忘れてた!ランドセルを投げ捨て、見入った。

その間お母さんは何やら台所でトントントンと包丁で何かを切っている。

そういえばお腹はぺこぺこだ。

アニメを見終わると「ご飯だよ~」とカレーとサラダが出てきた。

サラダはあまり好きではないけれど、カレーは大好き!

急いで食べたらお母さんに笑われてしまった。

 

ご飯を食べ終え、お風呂に入ってリビングに戻ると、お父さんがビールを飲んでいた。

何だか大人!って感じ。

あぐらをかいているお父さんの中にすぽっと入って、一緒にテレビを見た。

ちょっと大人になった気分。

テレビでは偉そうな人達が怖い顔して話し合っていてばかりで、全然楽しくない。

「この人は、ないかくそうりだいじんって言うんだよ」

お父さんは教えてくれたけどよく分からない。

アニメの方が面白い!

 

その内段々と眠たくなってきた。頭がこくこくしてきて、瞼が重い。

うつらうつらしていると、身体が浮いた。

大きな腕に包まれて布団に運ばれていた。

何だかすごく安心する。

 

 

次の瞬間には「朝だよ、起きなさい!」とお母さんの声が聞こえた。...眠い。

でも今日も学校に行ったら友達にも会えるし、もしかしたら春名ちゃんと話が出来るかもしれない!そう思うとわくわくして、頑張って起きられた。

そういえば今日の音楽の時間に歌う曲って何だっけ・・・

あっ!「すいかの名産地」だ!すごく好きな曲!

今日も楽しい一日になりそう!

「いってきます!」大きな声を出して、玄関のドアを開けた。 

 

 

 

 

 

 

 

 

すいかの名産地が一体何処なのか、考えずに歌えばいい時代は終わった。

 

すいかの名産地は何処なのか、疑問に持ちリサーチをするのは当たり前。

場所を調べた上で、概要・特徴・今後の展望・考え得るリスクをまとめる。

そして自分はその情報を使って何をして、どれくらいの利益をもたらすか、説明・提案をしなければならない。もし、そこまで気が回らないのであれば、そこまでの話。