誠宮道貞①

プリン鳴る 波乗り男が 消えた街 多摩川行きは up and down 作者 誠宮道貞 この短歌をご存知だろうか。 誠宮道貞なる人間は、ネット上で創作短歌を発信している人物であり、一部の界隈に熱狂的なファンを持っている。しかし、そのあまりにも前進的な作品性は…

欠伸

電車で私の真向かいに座っている女性が欠伸をした。 中国の三国時代の豪傑が酒の席でする様な、若しくは、龍が雲の中から轟音を鳴り響きかせながら出現してくる様な、若しくは、甲子園決勝9回裏2アウト満塁0-1で負けているチームがする円陣の掛け声の様な、…

ウルトラマンとの恋

私はもう、ウルトラマンを愛せない。 何が地球を守るヒーローよ! 私1人守ってないくせに! 私は、消費者金融からお金を借りている。 アルバイトもしているから決して返せない額ではないが、なかなかの額になってしまった。 「人は、手を差し伸べてくれない…

東京

1999年 夏 東京 蝉の甲高い響きをビルディングが無機質に跳ね返して、周囲一帯が夏の音で満たされている。 この夏、ノストラダムスの大予言が外れ、時間の楔を失った日本列島には、何とも間延びした日々が流れていた。 日本中で、「ノストラダムスの大予言が…

乙女散策道中

乙女は、季節外れの浴衣を身にまとい、日傘片手に歩いていた。 浴衣には白地に蒼い花があしらわれていて、彼女の黒い髪がよく映えている。 日傘を持つ手には陽が差し込み、透き通る様な肌が輝いている。 季節は春。 人は出会いと別れと酒に酔い、うららかな…

スイカの名産地

【昔の自分を思い出しても、良いことはないよ】 童謡【スイカの名産地】を耳にする度に、思い出すこの言葉。 人には昔の良かった自分に戻りたい、という欲求がある様に思える。 しかし、昔の良かった自分が今の自分にとって良い自分であるとは限らない。 時…